
ホロラボは10月30日、神奈川県藤沢市の江島神社が所蔵する「八臂弁財天像」と「妙音弁財天像」の3Dスキャン計測を実施したと発表しました。クモノスコーポレーション株式会社のスキャン技術と、Artec 3Dの機材・ソフトウェアを使い、2体の御像を3Dデータとして記録しています。

今回の3Dデータは、10月31日開催の「XRミートアップ文化財 #5 in伊勢」での展示対象です。
計測に使った機材と手順
計測には、Artec製の3Dスキャナー2機種とミラーレス一眼を使いました。色情報を得るための撮影はミラーレス一眼で行い、ホロラボの担当者が担当しています。

『Artec Leo』(ハンドヘルド型・中〜大型物向け)では、クモノスとArtec 3Dの担当者が2体それぞれの全体形状を計測しました。続けて『Artec Spider II』(高精細スキャン向け)で、細部の形状を追加で計測しています。2機種を組み合わせることで、台座や装飾品を含む詳細な3Dデータを記録しました。


計測後の工程
『Artec Leo』で計測した全体形状と、『Artec Spider II』で計測した細部の形状は、別々のデータです。この2つを1体の像として重ね合わせています。
位置合わせ・データ統合・欠損箇所の洗い出し
『Artec Leo』のデータと『Artec Spider II』の高精細データを位置合わせし、ひとつのメッシュに統合しました。扱ったのは、加工せず穴を塞がない状態(非水密)のデータです。
スキャナーの死角になった台座の裏側や衣の裾など、計測できなかった箇所はそのまま残しています。文化財の記録として、どこが実測でどこが補完なのかを後から判別できるようにするためです。
『Artec Studio』と『CloudCompare』で点群とメッシュの両方を確認し、欠損箇所を一点ずつ洗い出しました。そのうえで、補完するか記録として残すかを判断しています。

色・質感の再現(フォトテクスチャリング)
形状データだけでは、彩色や金箔、木肌の風合いは残りません。そこで、計測当日にミラーレス一眼で撮影した写真を形状データに投影し、実物の色と質感を再現しました。


部位ごとの分割
像は本体・台座・装飾品に分けて記録しています。八臂弁財天像は、冠、光背、弓、戟、剣、宝輪、胸飾りなど13点の持物・装飾品を個別データとして扱いました。妙音弁財天像は、琵琶と撥を単体で切り出しています。


プロジェクトの背景と役割分担
今回のプロジェクトは、江島神社宮司の相原圀彦氏が語った「まず記録することが大事」という意向から始まりました。この考えにホロラボ、クモノス、Artec 3Dの3社が賛同し、計測が実現したとのことです。
宮司の相原氏は、次のようにコメントしています。
「当神社所蔵の八臂弁財天像、妙音弁財天像は鎌倉期の作にて800年程が経過し、数百年先を見据えると現在の保存状態を保つことが極めて困難であることから文化財専門の諸先生の御意見をふまえ、3Dスキャンにてデータ保存して如何なる場合でも対処することが出来ることは大変意義あることである。」
デジタルデータの取り扱い方針は、公立小松大学 特任准教授の野口淳氏、明治大学兼任講師の荒井秀規氏、神奈川県立歴史博物館 主任学芸員の神野祐太氏の3名の協力を得て、学術的な観点を含めて策定されました。
各社の役割は次のとおりです。
ホロラボは、プロジェクトの企画・調整、ミラーレス一眼による撮影、データ後処理を担当しました。クモノスコーポレーションは、『Artec Leo』と『Artec Spider II』によるスキャン計測と技術的サポートを担当しています。Artec 3Dは、スキャナー機材の提供、『Artec Leo』と『Artec Spider II』によるスキャン計測、技術的サポートを担当しました。
