
桜町測量(溝田・佐野土地家屋調査士事務所)は10月30日、福岡県大牟田市に設置・運営するGNSS(衛星測位システム)の連続観測局『桜町電子基準局』が、2026年9月1日に国土地理院の「民間等電子基準点A級」に登録されたことを発表しました。あわせて、RTK補正データを利用登録不要・無償で10月15日から公開していることも明らかにしています。
『桜町電子基準局』は、ビズステーション株式会社のGNSS受信機『Drogger』を採用した観測局です。大牟田市、荒尾市をはじめとする有明地域の建設、測量、スマート農業などでの活用を目指しています。
A級登録の内容
A級は、国土地理院が「土木及び建築工事に活用可能な信頼性を確保、地殻変動監視にも活用可能」と位置付ける性能区分です。使用機器にくわえ、国家座標への準拠、設置環境・構造、連続観測データの品質などについて基準が定められています。
桜町測量の調べ(2026年10月27日確認)では、国土地理院の公表登録簿で確認できる範囲で、個人事務所を申請者とする初のA級登録です。2026年9月1日付の更新情報と、同年10月6日更新のA級登録簿に基づいています。
国土地理院の2026年10月6日更新の登録簿によると、A級は全国344点です。ソフトバンクとNTTドコモの2社が登録する計2,913点の内訳は、A級が339点(約11.6%)、B級が2,574点(約88.4%)で、いずれも2社合計の数値です。
同更新時のA級申請者は、公益社団法人日本測量協会、ソフトバンク株式会社、株式会社NTTドコモ、九州電力株式会社、桜町測量の5者です。
無償公開されるRTK補正データ
補正データは、対応するGNSS受信機と通信環境を用意し、良好な衛星受信環境などの条件下で、センチメートル級のリアルタイム測位に利用できるとのことです。測位精度や利用可能範囲は、使用する受信機、衛星配置、上空視界、周辺環境、観測局からの距離、通信環境などにより異なります。
ICT施工、土地・建物の調査測量、UAV測量、スマート農業、災害復旧、研究・教育などでの活用が想定されています。公共工事・公共測量などで使用する場合は、適用される基準・要領、作業規程、仕様書、発注者との協議内容などを確認する必要があります。

接続に必要な設定情報は、桜町測量のウェブサイトで公開されています。
溝田智司さんは、A級登録と無償公開について次のように述べています。「ビズステーション株式会社の技術支援にも支えられ、A級登録と、補正データの利用登録不要・無償公開を実現できました。」
観測局の仕様と提供方式
観測局の構成と提供条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 級別分類 | 民間等電子基準点A級 |
| 所在地 | 福岡県大牟田市桜町132番地 |
| GNSS受信機 | Drogger RZS.D |
| GNSSアンテナ | HX-CGX624A |
| 対応衛星 | GPS、みちびき(QZSS)、GLONASS、Galileo、BeiDou |
| 対応信号(GPS) | L1C/A・L2C・L2P・L5 |
| 対応信号(みちびき) | L1C/A・L1C/B・L2C・L5 |
| 対応信号(GLONASS) | L1CA・L2CA・L3 CDMA |
| 対応信号(Galileo) | E1・E5a・E5b・E6 |
| 対応信号(BeiDou) | B1I・B2I・B3I |
| 提供方式 | NTRIP方式(RTCM3.2メッセージ1005、1075、1085、1095、1115、1125、1230) |
| 利用料金 | 無料 |
| 利用登録・申込み | 不要 |
| 主な利用想定地域 | 大牟田市、荒尾市および周辺地域 |
機器からソフト・サービスまでそろう『Drogger RTK エコシステム』
観測局には、3周波GNSS受信機『RZS.D』と高精度チョークリングアンテナ『HX-CGX624A』が使われています。この組み合わせは、国土地理院の1級GNSS測量機(登録番号:235)として登録されています。

『Drogger』には、観測からデータの活用、日々の運用までを支えるソフトやサービスがあり、『Drogger RTK エコシステム』と呼ばれています。構成は次のとおりです。
- 設定・観測:Androidアプリ『Drogger-GPS』
- 解析:観測データを後処理する『Drogger Processor』
- 配信:受信機内蔵のNtrip Server機能と、中継サービス『Drogger Ntrip Caster』
- 監視:基準局からの通信停止・回復を知らせる監視メール

対応製品のユーザーは、解析ソフトのPersonalライセンスや配信・監視サービスなどを無償で利用できます。無償提供は対応製品の利用条件によります。『Drogger Processor』が無償なのはPersonalライセンスの範囲で、検定書出力など一部機能は有償です。通信料・電気料金などは別途必要です。
配信サーバーや監視システムを自前で構築・管理する負担を抑えられ、個人事務所による継続運用と地域への無償公開を支えているとのことです。
『Drogger Ntrip Caster』の配信環境は、静岡県が整備した21局のGNSS基準局でも活用されています。同県は2026年7月から、補正情報を問い合わせ不要・無償で提供しています。これは配信サービスの活用事例で、受信機・アンテナが同一製品であることを示すものではありません。
A級登録までの経緯
桜町測量は、2023年の『Drogger RZS.D』の発売と1級GNSS測量機への登録をきっかけに、取り組みを始めました。初回は登録に至りませんでしたが、2025年に『HX-CGX624A』が対応アンテナとして登録対象に追加されたため、機器を更新して再挑戦しました。
ビズステーション株式会社からは、観測データの取得方法や品質確認について技術的な助言を受けています。その後、設置環境の改善、停電・落雷対策、長期間の連続観測と品質確認を重ね、今回のA級登録に至りました。
